直也の姿を見ると、荘田の哄笑が、ピタリと中断した。相手の決死の形相が、傲岸な荘田の心にも鋭い刃物に触れたやうな、気味悪い感じを与へたのに違なかつた。が、彼はさり気なく、鷹揚に、徹頭徹尾勝利者であると云ふ自信で云つた。 「いやあ! 貴君でしたか。いつぞやは大変失礼しました。さあ! 何うか此方へお入り下さい! 丁度、貴君のお父様も来ていらつしやいますから。」 外面丈は可なり鄭重に、直也を引いた。直也は、その口を一文字に緊きしめたまゝ、黙々として一言も発しなかつた。彼は、父の方をなるべく見ないやうに――それは父に対する遠慮ではなくして、敬虔な基督教徒が異教徒と同席する時のやうな、憎悪と侮蔑とのために、なるべく父の方を見ないやうに、荘田の丁度向ひ側に卓を隔てゝ相対した。 「何う云ふ御用か、知りませんが、よく入らつしやいまして。貴君があんなに軽蔑なさつた成金の家へも、尋ねて来て下さる必要が出来たと見えますね。はゝゝゝゝ。」 荘田は、直也と面と向つて立つと、すぐ挑戦の第一の弾丸を送つた。 直也は、それに対して、何かを云ひ返さうとした。が、彼は烈しい怒りで、口の周囲の筋肉が、ピク/\と痙攣する丈で、言葉は少しも、出て来なかつた。キャバクラ アルバイト
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