下手の道具立て

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...... 2013年12月13日 の日記 ......
■ ある日の事   [ NO. 2013121301-1 ]
 ある日の事、私が何気なく見物していますと、一人の出方が、それはそれは見事なお菓子、今のような餅菓子ではなく、手の入った干菓子の折に入ったのを持って来て、
『これは、染之助親方からのお届物です』と云うのです。私はそれを聞いた時、舞台の上の美しい斎世宮――その時は、菅原伝授手習鑑が芸題で、染之助は斎世宮になっていたのです――のまぼろしが消えてしまってその代りにあの馬道で逢った蒼黒い、頬のすぼんだ小男の面影が、アリアリと頭の中に浮んだのです。その瞬間、私は居たたまらないような不快を感じて、幕が閉ると、逃げるように小屋を出ました。無論、その干菓子などには、見向きもしませんでしたよ。
 そんな事があってから、半月ばかりの間は守田座の木戸を潜らなかったよ、又その中に何となく染之助の舞台姿が恋しくなって来るのですよ。何でもその年の盆興業でした。馬琴の八犬伝を守田座の座附作者が脚色したのが大変な評判で、染之助の犬塚信乃の芳流閣の立ち廻りが、大変よいと云う人の噂でありましたので、私はまた堪らないような懐しさに責められて、守田座の木戸を潜ったのでしたよ。医師 求人

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