馬鹿な、馬鹿な! 貫一ほどの大馬鹿者が世界中を捜して何処に在る※ 僕はこれ程自分が大馬鹿とは、二十五歳の今日まで知……知……知らなかつた」 宮は可悲と可懼に襲はれて少く声さへ立てて泣きぬ。 憤を抑ふる貫一の呼吸は漸く乱れたり。 「宮さん、お前は好くも僕を欺いたね」 宮は覚えず慄けり。 「病気と云つてここへ来たのは、富山と逢ふ為だらう」 「まあ、そればつかりは……」 「おおそればつかりは?」 「余り邪推が過ぎるわ、余り酷いわ。何ぼ何でも余り酷い事を」 泣入る宮を尻目に挂けて、 「お前でも酷いと云ふ事を知つてゐるのかい、宮さん。これが酷いと云つて泣く程なら、大馬鹿者にされた貫一は……貫一は……貫一は血の涙を流しても足りは為んよ。 お前が得心せんものなら、此地へ来るに就いて僕に一言も言はんと云ふ法は無からう。家を出るのが突然で、その暇が無かつたなら、後から手紙を寄来すが可いぢやないか。出抜いて家を出るばかりか、何の便も為んところを見れば、始から富山と出会ふ手筈になつてゐたのだ。或は一所に来たのか知れはしない。宮さん、お前は奸婦だよ。姦通したも同じだよ」 「そんな酷いことを、貫一さん、余りだわ、余りだわ」 彼は正体も無く泣頽れつつ、寄らんとするを貫一は突退けて、 「操を破れば奸婦ぢやあるまいか」 「何時私が操を破つて?」風俗アルバイトs酒買って尻切られる - |
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